小説(散文)の基本構造とチェーホフ

550円(税50円)

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AKIMOTO 60343字 Структура прозы и «А.П.Чехов» The structure of prose and A.P.Chekhov (抜粋) つまり「犬を連れた婦人」での海は、高速(外向型)×低速(内向型)のモチーフの形で動詞相に従属する一方で、動詞相を阻害・浸食し、どこにも明記されていない未知の領域を指し示そうとする名詞相の機能を内包している。これが、一世紀を経た今日でも、世界中の読者をひきつけ、天蓋を突き抜けるような意味作用の変動・振幅を感じさせている理由である。 この構図は「かもめ」になるとより露骨になってくる。この作品の背後には、常に湖がある。第1幕中の湖は、すべての生物が絶滅した世界、つまり内向型の延長上のモチーフであるが、その劇が終わると、湖はその内向型のモチーフから解き放たれて、動詞相に対する浸食の機能を持つもの(名詞相)になっていく。つまり、湖と仮舞台との関係を、湖と本舞台との関係にそのまま重複させている。 湖は水の速度を持ちながら動詞相を浸食しようとするので、本舞台があたかも仮舞台(劇中劇)に移相させられているような効果が出てくる。本舞台が劇中劇的な性格になると、劇中劇は劇中劇中劇的なものに後退していく。これは、動詞相にとり大きな痛手である。多かれ少なかれ、動詞相に対する名詞相の抗力という場合、動詞相の仮舞台化という捉え方が馴染むであろう。現在時制に統一された作品も、仮舞台というものの印象に近い。  上述の通り、雨は海とは異なり動機づけられにくく、対立原基からの派生を受けにくい。「決闘」の結末での海には外向型のモチーフがつきまとうが、海は同時に背景・空間を構成し、浸食する水の機能を持っているという事を、ダメ押しするかのように雨が降り始める。それは、わずか3語(Стал накрапывать дождь.)であるにもかかわらず、作品の末尾に付け加えられ、小指で名詞相のメインスイッチを入れたかように、作品(動詞相)全体を揺るがす力を持っている。それは、動詞相・対立原基(高速×低速)を負うモチーフというよりは、作品の動詞相における性能・機能の限界に起因するため息のようなものであると同時に、現前化しない高みに向かおうとする名詞相のダイナミズムでもある。

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