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AKIMOTO
12453字
ロシアフォルマリズム（テクスト理論）の文学作品解釈への応用
梅光学院大学高等教育開発研究所紀要 (第3号) 37 - 55 2019年3月31日
Применение русского формализма (текстологии) к интерпретации литературных произведений
Application of RussianFormalism（Textology）to the interpretation of literary works
2018年度授業の一部（日本の文学、フィクション・ノンフィクション論、ゼミナール�機Ν凝�）において、ロシアフォルマリズム[1]由来の二項対立（対比）を主軸とする分析手法によって、解釈を行う前に文学作品の基本構造を分析するという試みを行った。その結果、学生等若手読者の読解・解釈に対するハードルが下がると同時に、解釈の幅や自由度に対する理解が深まったという事例を確認できたので、本稿にて紹介したい。
領域：ロシアフォルマリズム、テクスト理論、二項対立、等価・相似・平行法、動詞相（テーマ構成）、名詞相（詩性）
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言葉の秩序として文学作品を分析するテクスト理論の手法は、本邦ではあまり一般的ではなく、その地位は低いと言わざるを得ない。なぜなら、テクスト理論は構造論、言語学、あるいは芸術性や詩性という説明・可視化しにくい抽象に向かいがちであり、歴史、作家史、文化、心理学、哲学等の背景要因（コード・コンテクスト）によって、明確で重厚な意味やテーマ構成を高らかに論じることが少ないからであろう。
テクスト理論は、1910〜1920年代のロシアフォルマリズムを起点としているが、1960年以降欧米で発達した構造主義、受容論、読書行為論、さらに仏ジャック・デリダの脱構築等にまで派生しており、一見組しにくい雰囲気を醸し出しているのは事実である。
一方、学生等若手読者の中には、歴史的背景を知らないので、作品の意味が分からないという強迫観念を抱いている者が少なくないが、テクスト理論がそのような思い込みを払底するための一助となる場合があることが上記の授業を通じ分かってきた。なぜなら、背景要因（コード・コンテクスト）の見識なしに、自己とテクストが対話する静謐な空間で、言葉や意味の秩序を理解することができ、また、逆算的に作品基本構造の理解を起点に、背景要因の調査・研究に染手し、深堀していくことも容易になるからである。
本稿では、チェーホフ短編作品を題材にしたテクスト分析演習例の全体を確認した上で、2018年度授業（日本の文学）にて導入したテクスト理論の作品解釈への応用例を総括し、一つのマイルストーンとしたいと考える。
